教育コーチのGです。
第35回の読書日記は「組織力・宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐ」 著者:高橋伸夫 ちくま新書
です。
高橋さんは、東京大学大学院経済学研究科教授で、経営学・経営組織論を専門とされている方です。
表紙裏にこうあります。
【経営の本質とは、一人ひとりでは突破できない難関を、みんなでなんとか切り抜けることにある。】
このために、
【組織力を高めることが欠かせない】
そして、
【組織力を宿し、紡ぎ、磨き、繋ぐ】
としています。
何やら難しそうな雰囲気が漂ってきます。
実際に難解な部分もあるのですが、
平易に書かれている部分もある(私にはその部分しか分かりませんでした)ので、
この平易な部分から、
日々の業務や組織運営において、役立ちそうな文章を引っ張り出します。
インターンシップ先や音楽サークル、アルバイトにおける事例を挙げて、
【実は、現実の意思決定では、ただたんに「最適な選択肢を選ぶ」みたいな幼稚な意思決定は少ない。】
と、言い切ってしまっています。
【決めた後のことまで考えて、意思決定プロセスを進めるのである。】
と、決定された事項そのものだけでなく、そのプロセスが重要であると断じています。
(ロジカルシンキングの限界もここにあるんですよね)
日本的な文化を「ハイ・コンテクスト」、西洋的な文化を「ロー・コンテクスト」とよく言いますが、
高橋さんも同様の趣旨で、次のようにピーター・ドラッカーの論を挙げ、日本的な経営のあり方を伝えています。
【稟議制度についても、日本企業ではコンセンサス(同意)に基づく決定が行われ、
決定までには時間がかかるかもしれないが、決まってしまえば、すでに合意が成立しているので実行は速い】
そして、単なる成果主義を暗(明?)に批判しています。
【たとえば、「毎年査定する」と評価する期間を明言されてしまえば、
誰だって、1年以内に成果の出せるような仕事ばかりをやるようになる。
それなのに、毎年成果を査定すると宣言した経営者自らが、
「どうしてみんな、すぐに成果の出るようなことばかりをやるようになるんだ?」
と嘆いて見せたりする】
と笑い飛ばしています。
最後に、上に立つ者のあり方として、
【上司は部下をちゃんと見ているべきである。目が節穴では困るのである。】
【自己申告をしなくても、上司はちゃんと見ていてくれるはずだ、
上司がそこのあたりを十分分かっていてくれているはずだと思えばこそ、
部下は安心して働けるのである。】
とまとめています。
これは、たんに企業の上司・部下という関係だけでなく、
生徒と先生、親と子の関係においても、ある面において成り立つものであると思います。
東大大学院の先生が書いた難しい組織論の本も、
自分の立ち位置に置き換えて読んでみると、
意外に学び深いものです。
みなさまどうぞ、ご一読ください。