教育コーチのGです。
第6回徒然読書日記は『あなたの夢はなんですか?私の夢は大人になるまで生きることです。(著者:池間哲郎)』です。
著者の池間さんは、NPO法人の代表で、主にアジアのゴミ捨て場やスラム街の貧困地域を撮影や支援のために足を運び続けています(著者プロフィール)。
この本は、そういった活動を通して、池間さんが実際に見聞きした、アジアの貧困地区における人々の現状を書き綴ったものです。
プロローグにこうあります。
『ゴミの山で生きる人々、マンホールの中で暮らす子ども、
売春婦として売られて行く少女、飢えを忘れるためにシンナーを吸う子ども、
貧しさゆえに親から引き離された子どもたち・・・・・・、
そんな多くの悲しみを見てしまったのです。
やせ細った子どもの亡骸をこの胸に抱いたこともあります。
見なければよかった、知らなければよかったと思うことも、時にはあります。』
『それでも、どうしたらいいのかと悩んだ末に、
見てしまった以上は何かするべきだという結論に達したのです。
たとえ無力であろうとも、
自分にできることはやっていこうと心に決めて行動することにしたのです。』
『ただ多くの悲しみに出会い、心を動かされただけなのです。』
そして、フィリピンで出会った一人の少女が紹介されます。
『かつてフィリピンの首都マニラに、スモーキーマウンテンという場所がありました。
一日中ダンプカーでゴミが運びこまれ、ここに捨てられていきます。
積み重ねられたゴミは自然発火して、いつも煙が上がっています。
だから「煙の山」、スモーキーマウンテンと呼ばれていたのです。
あたり一面、目も開けられないほどの煙と、
吐き気をもよおす悪臭がただよっていました。
ビンやスクラップなどのゴミを拾って、
それをリサイクル業者に売って暮らしている子どもたちがいました。
中には5歳にも満たないと思われる子どももいます。
手や足は真っ黒に汚れ、皮がめくれて血だらけ。
それでも子どもたちは、一心不乱にゴミを拾っていました。
その姿は生きるために必死で戦っているように見えました。
子どもたちに話を聞いてみました。
全員がゴミを拾うことを毎日の仕事にしている子どもたちです。
その中に一人の少女がいました。
足の先から頭のてっぺんまで真っ黒に汚れ、
ボロボロのTシャツを着た10歳ぐらいの女の子です。
瞳がキラキラと輝き、かわいい笑顔が印象的でした。
私はこの子に聞いてみました。
「あなたの夢はなんですか?」
少女はニコニコしながら答えました。
「私の夢は大人になるまで生きることです」
この答えを聞いて、グッと胸にきました。
笑顔だったから、よけいにこたえました。
大人になるまで生きるなんて当然のことだ、と思っていました。
そんな当たり前のことが夢だと聞いて、愕然としてしまったのです。
彼らが必死で生きている姿を見て涙が止まらなくなり、
ゴミの中で人目もはばからず大声で泣いてしまいました。
ぶざまな人生を歩んできた自分が恥ずかしくなったのです。
同時に「今まで何をしていたのだ」と怒りとも思える感情がわき上がり、
「真剣に生きなければ」と心の底から思いました。』
また、タイでは親を守るために子どもたちが売られていく、そのような現実が存在していると訴えかけています。
さらには、カンボジアのスラム街、モンゴルのマンホールチルドレン、地雷で足を失った少女など、悲しくも力強く生きている人々が描写されています。
著者は毎年、モンゴルの貧しい子どもたちを沖縄に招いて、沖縄の人々のモンゴル支援に対するお礼の意味を込めて、彼らの得意な曲芸や楽器演奏によるコンサートを開催しています。
このコンサートのため沖縄を訪れたある少女に、著者はこう語りかけました。
『もっと勉強して日本に留学しないか。
私たちが全面的に協力するから沖縄で勉強してみないか』
『すると、その言葉に少女は異常なほどの反応を示しました。
体中が震え、両手を握りしめて大きな声で泣き出したのです。
「本当に夢を見てもいいのですか!本当に夢をつかんでいいのですか!?」』
そして著者は、エピローグでこうまとめています。
『ボランティアには大事なことが三つあります。
そのことをよくわかってほしいと思います。
一つ目は、「理解する」ということです。
二つ目は、「少しだけ分けてください」ということ。
三つ目は私が最も伝えたいこと。
一番大事なボランティアは、自分自身がまず一生懸命に生きること。私はそう思います。』
3年前、200名近くの高校2年生たちに、先に紹介したフィリピンの少女に関するエピソードの読み聞かせをしました。
その時の彼らの感想をいくつかご紹介します。
「たしかに自分は大人になるのが夢ということは考えたことが無かったし、大人に普通になると考えてた。テレビだって好き勝手に見てるし、時間のむだ遣いになることばかりしてると思う。でも、日本に生まれてこなかったら、テレビなんて見れなかっただろうし、ひまつぶしもできなかったと思う。日本に生まれてこのようなことが当たり前だとか思ってたけど、もう少し人生について考えなくてはいけないな。」
「今までは大切なコトを大切にしていなかったと思う。これからは大切にしていきたいと思った。私たちは日本に生まれて、生きることが当たり前のようになっているから、当たり前って思わないで生きていきたい。」
「日本という国に生まれたことを誇りに思い感謝したい。」
そして、高校2年生たちに向かって、こう結びました。
「日本では、お金がないと言っても餓死するということはありません。
大人になるまで生きることが夢だという人もいません。
恵まれすぎていることにさえ気づいていない人がほとんどです。
日本という恵まれた国に生きてあなたは何を成すのですか。
あなたがどれだけ恵まれているかを、自分の力で何でもできるということを、
どれだけの人が理解していますか。
努力に努力を重ねてどんなことでも成し遂げて下さい。
この幸せな国に生きるあなた方には、その権利がある、その義務がある。
すでにある、この幸せに気づいて下さい」
さて、
「あなたの夢はなんですか?」